学生のレポート(D)
和菓子か、洋菓子なんて選べない! そんなアナタに、欲張りな願いを叶えてくれる味噌ロールケーキはいかが?
「フードメディア演習」の授業の中で私達が作ったのは、「ひよこ豆味噌」を生地に混ぜ込んだ味噌ロールケーキだ。その中には、こし餡と生クリームを一緒に巻き込んでおり、和菓子要素も組み込んだものに。いわば、洋菓子と和菓子を同時に味わえるような構成である。生地から味噌の塩味も感じられ、それが中のこし餡や生クリームの甘さとよく合わさっており、巷でよく表現される“甘じょっぱい”スイーツに仕上がっているのだ。ロールケーキといえば、見映えは優しい黄色を想像しがちだが、味噌の茶色が混ざることで、どことなく“渋さ”が漂う演出にできたように思う。さらに苺をトッピングすることで季節感も醸し出た。制作した1月は、丁度苺が旬だったのでそうしたのだが、作る時季によってフルーツを替えると、季節ごとの旬の味も楽しめる。
そもそものきっかけは、木曜2時間目の「フードメディア演習」の授業で、ある日、先生から六甲味噌製造所の「ひよこ豆味噌」を手渡された。見ためだけでは、一般の大豆で造られた味噌と何ら変わらない。じゃあ何が違うというのか?それはこの味噌がひよこ豆でできているということ。そう知った時、「ひよこ豆って、あのコロコロしたやつかな?」という印象を抱いたぐらいに過ぎなかった。それが調べてみると、大豆アレルギーの人でも食べられるようにとの思いを込めて造った商品のようで、まさに大豆アレルギーを持っている人にとっては救世主のような存在だと感心した。私は、大豆アレルギーではなく、当たり前のように味噌を食べて育って来た。だが大豆アレルギーがあれば、そうはいくまい。味噌汁には、沢山の栄養があるのに、大豆アレルギーの人は当たり前のように食せないなんて可哀そうではないかと改めて思った。しかし、この「ひよこ豆味噌」を使えば、そんな不公平感も吹き飛ばせる。なんていいのだろうと、じっとこの商品を見つめてしまった。
ここで少し我が家の味噌汁事情を話したい。味噌汁には、その家庭ごとに味が異なるといわれており、百軒集まれば、百の味噌汁の味がある。私の母は、曽祖母がいつも食事を作ってくれて育ったらしい。母からよく聞いたのは、曽祖母の作る味噌汁には、一つの特徴があり、それはかなりの薄味だったという。本当に薄いから、悪く表現すれば水くさい味噌だったようだ。母にとっては、それが丁度よく、家庭の味に。毎日作ってくれるから、朝食や昼食、お腹が空いた時には、味噌汁の中にご飯を入れて食べるのが好きだったと懐かしそうに私に話してくれていた。
私は、そんな話をする時の母の表情が大好きだ。その影響もあってか、我が家の味噌汁は当然ながら味が薄い。物心ついた時から、そのように育って来たのだから、自分で作る時も薄味になってしまう。例えば、家庭で作った時に濃いかなと思う味付けをしてしまうと、「濃くない?大丈夫?」と聞いて来る。「大丈夫」と私が答えても母は「ほんまに?お湯足そうか?」としつこいのだ。そこで「じゃあ、お願い」と言うと、お湯を足して薄めてくれる。私が作った側でない時は、何度も「大丈夫?」と聞かれることに、内心「そんなに何回も聞かなくてもいいのになぁ」と思っていた。でも私が作ると、同じ質問をするので、これは作る側にとっての"あるある"現象なのだと考えるようになった。やはり濃いと思った時にはすぐさま「お願い!」と言って薄めてもらう方が、そのあと気にせずにいられるからお互いにとってもいいのだろう。
母に倣ったわけではないが、私も味噌汁にご飯を入れてよく食べる。我が家は圧倒的にご飯派なので、朝もご飯を食べるし、学校から帰った時だってご飯を食べる。そんな時に、例の食べ方が習慣化され、母同様思い出の味となっている。私は曽祖母には一度も会えなかったが、生きていれば会ってみたかったし、薄味の元祖とも呼ぶべき曽祖母の味噌汁だって味わってみたかったと思っている。
話は味噌スイーツづくりに戻るが、今回「ひよこ豆味噌」でレシピを作るまで、世の中には、こんなに多様な味噌の使い方があるとは思わなかった。でも今回の挑戦から、味噌といえば"ほっこり味噌汁"などのイメージ以外にも新たな魅力を持つことに気づいたのである。だからこそ余計に、若い子達には味噌の多様な可能性を感じてほしいという気持ちが強くなった。大豆アレルギーの人でも安心して使える「ひよこ豆味噌」の存在意義は素晴らしいことだし、この味噌がもっともっと普及して行ってほしいと願うばかりだ。
(文/大阪樟蔭女子大学学芸学部ライフプランニング学科 小西眞帆)