私達は、食材を語る時に“旬”というフレーズをよく用いる。旬とは、その食材が最も美味しい頃や、よく採れる頃を指している。本来、旬とは、10日を意味する。よく月のうちで、上旬・中旬・下旬を呼ぶことからわかってもらえるだろうが、それは10日ごとの単位なのだ。竹冠に旬と書いて「タケノコ」というのは、まさに筍が10日で竹になるといわれ、それが文字となって表れたと思われる。だから私は冒頭に「よくできた字だ」と言ったのである。言葉として筍関連であるのは、“雨後の筍”という表現。春は雨が多く、その雨が降った後には筍が生えやすくなる_、それを称して“雨後の筍”と呼んでいる。意味としては、ある事象がきっかけとなって続々と発生して来る様をいう。“筍生活”なんていうのも関連した言葉。筍の皮を一枚ずつはいでいくように身の周りのものを少しずつ売って生活を凌いでいく様を表している。“筍の親まさり”なるフレーズは、親より子が優れていることをいう。竹は食べられないが、子である筍は食用に適している_、そんなことを言いたいのだろう。このように筍は、その特性から色んなたとえとして使われており、我々には関係性の深い素材だというのがわかる。