近年、ハロウィンが一般化し、商業的にはイースターまで持ち出して習慣化しようとの動きが見られる。宗教が異なる海外の祭りをピックアップするのはいいが、それなら日本の習慣をもっと掘り起こすべきと考えるのは、少々天邪鬼なのだろうか。ハロウィンの原理を見ていると、どうも地蔵盆に似ているように思えてならない。地蔵盆は、近畿地方に根づくもので、道祖神信仰と結びついた辻地蔵が対象。旧暦の7月24日を中心にその三日間に地蔵祭として行われた。今はグレゴリオ暦が使われているために8月23日と24日両日にかけて縁日を催すことが多くなっている。そもそもは京都発祥のもので、平安期以降に地蔵信仰が民間に広がって地域の鬼から子供を守るとして伝えられたのがきっかけで、地蔵盆として関西では縁日を行うようになった。室町期にかなり流行したようだが、関東・東海までは伝わらなかったようで今でも新潟や長野では行っていても首都圏では見慣れぬ風習だそう。
町々にある地蔵にお供えをし、子供達はお菓子をもらう、いわば子供中心の祭事なのだが、私が子供の頃は、町の大人達が夜に集まり、ご詠歌を唱えていた。所によっては数珠回しなる大きくて長い数珠を読経に合わせて回す儀式を行うこともあるようだ。京都では、六地蔵巡りが行われており、京都へ入る旧街道6ヵ所の地蔵を8月22~23日の二日間でお祀りするとご利益があるといわれている。近年は少子化の影響と、町の地蔵を世話する人が少なくなったために地蔵盆が昔ほど晩夏の光景ではなくなったように思う。地蔵盆を知らない世代に説明するのに「日本のハロウィンのよう」なんて言う人がいるが、まさに嘆かわしく、私達は一体どこに住んでいるのかと問いたくもなる。私の子供の頃、地蔵盆は夏休みのフィナーレ的なイベントだったように思う。田舎に帰っていた子もその頃までには町に戻って来て、子供と大人が一体になって地蔵盆を取り行った_、そんな光景を取り戻したいと思うのは、郷愁を懐かしんでいるからなのだろうか。