【ワンポイント】
3)の工程でどうしても粉っぽくなるようであれば、手でまとめましょう。ビニール袋に入れてまとめるのでも可。それでもまとまらない時は油を少し入れてください。
〜赤だし味噌を使ってスイーツに挑戦〜
大阪樟蔭女子大学学芸学部ライフプランニング学科の専攻科目に「フードメディア演習」なる授業がある。この授業では、食を企画することをメインに様々なプロジェクトに参加する。
その一つが、六甲味噌製造所HP内に掲載する味噌レシピが課題。曽我先生から「芦屋そだち赤だし味噌」を授業中に手渡しされ、「女子大生が考える味噌ワールド」をテーマにレシピ考案がなされた。使用素材となった「芦屋そだち赤だし味噌」は、兵庫県産米と兵庫県産大豆で仕込んで、天然醸造した「芦屋そだち米赤味噌」と国産大豆を使った豆味噌を独自にブレンドしたもの。その名の通り赤だしを作る時に活用する味噌だ。ところが先生は「赤だしに使わず、意外性のあるものに活用して」と言って私達に手渡したのだから厄介だ。普段それを使わない料理はないかと頭を悩ませた。
ところで私の家族の話で恐縮だが、赤だしといえばこんなエピソードがある。弟は、幼い頃からアサリの赤だし大ファンだった。寿司屋に行けば、必ずといっていいほどそれを注文する。ある日のこと、幼かった弟と父が二人で出かけた際に道頓堀にある寿司屋に入ったそうだ。この店は、私達が俗に言う、いわゆる回らない寿司屋である。彼らはカウンターに陣取り注文をしようとすると、いきなり女将が弟の隣に座って来た。この名店では、幼稚園児が来ることは珍しいらしく、女将は弟のサポートに付いたと思われる。父も社会経験の一つと踏んだのだろうか、できるだけ弟自身に注文をさせようとした。
女将が横に付いてくれたこともあって頼みやすくなったのだろう、弟はあろうことか、寿司ではなく、まず初めにアサリの赤だしを注文した。その赤だしがよほど美味しかったのか、なんと二杯目も注文。さらに三杯目を頼もうとした。その時、女将からストップが入った。女将によると、アサリは鉄分や亜鉛、カリウムなど栄養価が豊富な食材だそう。でも子供が食べ過ぎると、急性鉄中毒になる恐れがある。いくら好きでも弟の身体のことを思ってストップをかけてくれたのだ。そんな優しい女将の行為が、我が一家の赤だしエピソードとして残っている。ちなみに私もその寿司屋に行ったことがある。最後に入ったのは10年以上前、私もアサリの赤だしを飲んだといいたいところだが、私は何せアサリが苦手。その分、寿司をたっぷり堪能した。
さて、肝心の私達のレシピ提案だが、5人で話し合う中で「チョコレートと掛け合わせるのがユニークではないか」との結論に至った。そこで我々は、「芦屋そだち赤だし味噌」とミルクチョコレート、生クリームで作ったガナッシュを、シンプルなクッキーでサンドするスイーツを考えた。ビターチョコレートという手もあったが、それよりはミルクチョコレートの方が、「赤だし味噌」と会い、その良さを引き出すことができたのである。
シンプルではあるが、甘じょっぱいガナッシュは、ありそうでなく、新しい発見に映った。また、辛味や香りがある山椒や七味を足すことによって大人のお菓子に変貌。これなら大人の男性にも食べやすいかもしれない。レシピもシンプルで、作りやすいのでぜひ家庭で試してほしい。
(文/大阪樟蔭女子大学学芸学部ライフプランニング学科 椿本理穂)
〜赤だしの味噌でコクを増したガナッシュ〜
シックな背景に映える赤色の七味と緑色の山椒_、写真では一見、作りかけのように見えるクッキーだが、これが大阪樟蔭女子大学の学生である私達が考案した「赤味噌チョコのガナッシュ」だ。これを作ることになった経緯は「フードメディア演習」の授業内でのこと。曽我先生から六甲味噌製造所の商品「芦屋そだち赤だし味噌」を手渡され、「この味噌を使ってレシピを考えてや。でも面白ないもんを作ったらあかんで」と言われたからだ。この言葉で、私の頭の中は、まっ白ならぬ茶色い食べ物でいっぱいになった。赤味噌といえば、一般的には大豆を長時間水に浸し、蒸して造る。メラード反応が起こりやすい状態となり、赤褐色になる。白味噌とは造り方や熟成期間も異なり、熟成期間が長くなる分、コクのある味わいを持つ。どて煮に、味噌かつ、味噌煮込みうどんと色々料理はあるが、温かくほっこりしたものばかりが頭を過った。ましてやこの味噌は「赤だし味噌」_、なのに先生は「赤だしに使ったらあかんで」と鬼のような要望を伝えて来た。
味噌は地域性のある調味料で、場所によっては米で造ったり、麦で造ったり、豆を用いたりする。中でも赤味噌は、煮込んでも美味しいことから独特の進化を遂げて来たそうだ。戦国武将である徳川家康は、「長寿こそ勝ち残りの秘訣だ」とばかりに味噌を活用。ことさら三河の味噌であった八丁味噌を好んだといわれている。家康の健康オタクぶりは、75歳まで生きたその年齢からも窺い知れる。長寿の秘訣は、麦飯と八丁味噌だと言ったとか、言わないとか…。とりわけ八丁味噌で作る赤だしは、日常欠かせぬものだったらしい。ちなみに赤だしとは、豆味噌を用いた調合味噌仕立ての味噌汁を言う。六甲味噌製造所の「芦屋そだち赤だし味噌」は、「芦屋そだち米赤味噌」をベースに、国産大豆を使った豆味噌を独自にブレンドして造っており、文字通り美味しい赤だしができるように調味してくれるのだ。この味噌をどうやったら映えさせられるのか_、ここが女子大生の発想力の見せ所でもある。
早速、5人のメンバーでブレストをしてみると、「チョコレートと味噌が合うのではないか」という意見が出て来た。試作してみたらこれが大当たり!「赤だし味噌」の濃いコクがチョコレートの深みを醸し出しており、今までに味わったことがないバランスの良さが出ていた。先生に「赤だし味噌をチョコと合わせたい」と進言すると「面白い!」との返答。どうやら味噌をスイーツにするというユニークさが女子大生の発想として刺さったようだ。そこで私達は、「赤だし味噌」を加えたガナッシュを、シンプルなクッキーで挟んだ洋菓子にして作ることにした。「赤だし味噌」のおかげでコクを増したガナッシュに、七味と山椒の刺激と色が加わり、大人のお菓子へと行き着いた。時は1月中旬_、チョコといえば、あと1ヶ月足らずで、バレンタインデーがやって来るのだ。
私は、毎日おばあちゃんと電話で話す日課がある。某日、おばあちゃんが「今年は何を作るんや」と言った。毎年、我が家ではおばあちゃんと一緒にお菓子を作って家族や親戚、友人に贈る習慣がある。今年は、就活や卒論の準備などでバタバタし、すっかりそのことを忘れており、それを彼女が指摘したのであった。私は、近年物忘れが酷くなりつつあるおばあちゃんの一言に涙が出そうになった。
恒例行事といえば、もう一つある。それはおばあちゃんの大好きな赤貝のひもが旬の頃に寿司屋へ出かけることだ。行きつけの寿司屋で握り寿司と一緒に出される赤だし_。そこには茗荷と大葉を刻んだものと、しじみが入っている。この一杯には、豆味噌の渋みと米味噌の甘味に、沢山の薬味の食感が合わさり、その効果で余計に寿司が進む。
おばあちゃんは、今まで食べたことがないものを食すと、「また新しい味を知ったから寿命が延びるよ。まだまだあなた達には、お世話にならないと…」と嬉しそうに言ってくれる。まさに生きることを楽しんでくれているようで、私はいつも新たな食との出合いを求めており、決まって彼女にそれを提供するのだ。「あっ、忘れてはならない恒例行事_、今年は、『赤だし味噌』を使ったあの大人のお菓子を一緒に作って食べてもらおう」。そう思うと、ワクワクして来る。きっとおばあちゃんは、寿命を延ばしてくれるに違いない。
(文/大阪樟蔭女子大学学芸学部ライフプランニング学科 駒井佳奈)